老後や定年後に家は買うなと言われているのは資金が問題?

管理者

「老後や定年後に家は買うな」と聞いたことがあるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

この記事では、老後の家購入に関する否定的な意見と、反対に家を購入する方が良いとされる意見について解説している記事です。

最後まで読んで頂ければ、老後や定年後でも家を買うことも選択肢の一つだということが理解できるようになります。

老後や定年後に家を買うか悩んでいる方は続きをお読みください。

「老後や定年後に家は買うな」と言われる理由とは?

定年後は、基本的に今までの貯蓄と年金で生活する人が大半です。

そんな中でマイホームへの夢を叶えようとすると、様々な反対意見を聞くことになります。

「老後に家を買うな」と強く言われる理由を3つ見ていきましょう。

多額の現金が必要になる

老後や定年後に家を買うときは、現金での一括購入が推奨されます。

若い世代のように安定した収入が見込めないため、住宅ローンの審査が厳しく、融資を受けられない場合があるから。

つまりマイホームが欲しいなら、老後までに貯蓄をしておかなければなりません。

中には手持ちの資金が足りず、退職金を家の購入に充てる人もいます。

そうなると年金を軸とした生活になり、月々決められた額でやり繰りをしていくうちに生活の自由度が下がっていくのです。

持ち家を手に入れるためとはいえ、手元に残る資金がごっそり減る状況は不安なもの。

仕事から解放されて自由になったはずなのに、かえって老後の心配が増えてしまいます。

せっかく買っても何年住めるかわからない

老後に家を買ったとしても、何年住めるかは誰にも予測できません。

2022年に発表された日本人の平均寿命を見てみると、男性は81歳、女性は87歳でした。

定年を65歳とすると男性は16年、女性は22年の老後を過ごすことになりますが、これはあくまで平均値のため実際の寿命は人それぞれです。

手続きを終えてやっとマイホームを手にしたのに、数年で亡くなる可能性もあります。

もし長生きできたとしても、老後の全ての時間を家で過ごすことは、意外と難しいです。

老人ホームに入ったり、子どもの家で介護してもらうなどの同居が決まると、持ち家を手放さなければなりません。

せっかく買うからには長く住みたいものですが、その保証はどこにもないのです。

新しい生活に対応できるか不安

歳を重ねるにつれて、慣れ親しんだ環境から離れると以下のような不満が出ます。

  • バスや電車など交通の便が悪い
  • 生活圏が変わっていつものスーパーで買い物できない
  • 交通量が多くて通行が危ない
  • かかりつけの病院や役所までが遠くなった
  • 地域で交流していた人達と距離が出来て疎遠になった

夫が会社勤め・妻が専業主婦やパート勤務だった家庭の場合、夫側は住む地域の変化に抵抗がないかもしれません。

しかし、今までの土地で関係性を築いてきた妻にとって、引っ越すということは生活基盤がリセットされる大きな出来事です。

夫婦一緒に新しい家に住むのだとしたら、共に納得してから話を進めないと、いずれ不満が爆発してしまう可能性があります。

また、近隣住民が問題のある人だったり、騒音トラブルなどに巻き込まれた場合、経済的にも体力的にも引っ越す余力は残っていません。

新生活の状況が良いものかどうかは、運も関係していると言えます。

老後や定年後に家を買うメリットとデメリット

若いうちにマイホームを購入する「持ち家派」と、生涯賃貸物件で暮らす「賃貸派」。

さらに近年では、定年まで賃貸に住んでから老後に家を買うという人が現れました。

この「第三の派閥」のメリット、デメリットを見ていきましょう。

老後や定年後に家を買うメリット

まず老後・定年後に家を購入するメリットを3つご紹介します。

終の棲家を手に入れられる

賃貸物件は、高齢になるほど借りることが難しくなる。

家賃を支払う能力の低下・保証人の不在・孤独死の可能性などを考慮した結果、賃貸物件のオーナーが年配層へ貸し渋る傾向にあるからです。

その点、持ち家を住宅ローン無しで購入できていれば、住む場所や毎月の家賃に悩まされる心配がありません。

家賃を支払い続けても何も残らない賃貸物件と違い、マイホームは資産を保持すると同時に住むことができて一石二鳥なのです。

さらに、国土交通省の令和4年度住宅市場動向調査から興味深いことがわかります。

  • 注文住宅を初めて取得した人:第1位…30歳代(45.1%)
  • 注文住宅を2回以上取得した人:第1位…60歳以上(55.9%)

働き盛りの30歳代で初めて家を買う人が多いですが、住み替えとして家を買う人は60歳以上が最も多い結果となりました。

老後に持ち家を購入した人々は、新鮮な気持ちになれる新しい住まいで、定年後の第二の人生を過ごしています。

家賃を永続的に支払わなくてよい

2ちゃんねるの開設者で実業家の西村博之氏は、持ち家についてこんな発言をしています。

「賃貸でお金貯めて、老後は地方で温泉三昧」

働いているときは賃貸に住んで貯蓄を増やし、老後は貯めたお金と年金収入に見合った「好みの持ち家」を購入すべきという考え方。

定年まで働いて資金に余裕が持てた場合、衣食住の「住」だけでも確実に確保しておくことは、老後の安心材料になるのです。

それとは反対に、長生きするほど家賃の支払いも増加するのが賃貸物件。

老後も賃貸に住み続けたシミュレーション結果は次のとおりです。

  • 都内の2LDK賃貸住宅
  • 夫婦2人で老後30年暮らす
  • 家賃6万+共益費1万=月7万円の支払
  • 初期費用は家賃の半年分=計36万円
  • 更新費は2年に1度6万円=計84万円
  • トータルコスト:計2,640万円

上記の例では2,640万円の支払いになりましたが、設定年数より長生きしたり家賃が値上がりすると、トータルコストはさらに膨れ上がるでしょう。

間取りに自由がきく

暮らしやすい間取りを自由に選べるのは、マイホームの特権です。

特に老後はバリアフリーな住宅を選ぶことで、転倒などの身体的リスクを減らせる。

またゲストルームを用意しておくと、孫や友人達が遊びにくる機会を作れるのです。

持ち家なので手を加えることに制限がないのもメリットの1つ。

例えば物置に使っていた部屋を防音仕様のミニシアターにリフォームすれば、ゆったりと映画や音楽を楽しめる空間になります。

最適な間取りを選ぶポイントとしては、子どもが独立し、老後の生活様式がある程度見通せるようになってから家を購入すること。

子どもの私物がなくなる、大人数用の食器が不要になるなど、必要な物の取捨選択ができ、夫婦で暮らすために必要なスペースがより明確に把握できるからです。

老後や定年後に家を買うデメリット

では次に、老後・定年後に家を購入した際のデメリットを3つご紹介します。

資金不足に不安を覚える

マイホームを購入することで、一般的には手持ちの資金が大幅に少なくなります。

特に怖いのは、介護の必要性が出て来た場合。

元気に老後を過ごしていたとしても「介護は突然やってくる」と言われています。

ケガや病気で、いきなり寝たきりになってしまう可能性も十分に考えられるのです。

その際に在宅介護を選択するなら、次のようなものが必要となります。

  • 介護用ベッド
  • ポータブルトイレ
  • おむつなどの消耗品
  • 車椅子や杖などの歩行補助具
  • 誤嚥防止の食料や介護用の食器

持ち家は修繕費や固定資産税で定期的な出費がありますが、在宅介護になると上記の物品の調達やデイサービスといった福祉利用料も支払わなければならないのです。

また自分の子どもや親戚の冠婚葬祭などの臨時出費にも注意。

孫の誕生・入園・入学・進級・お年玉などをあげたいと考えるなら、さらに余力を残して貯蓄しておく必要があります。

マイホーム購入によって資金が少ない状態から老後をスタートすると、出費が重なったときに生活を維持できるのか不安を覚えてしまうのです。

広すぎるスペースが不要になる

加齢にともない行動範囲が狭くなってくると、持ち家でも使わないスペースが出てきます。

必要なものを判断する力や片づける体力も低下していくため、余った空間に捨てきれない物品をため込んでしまい、部屋が散らかるのです。

せっかく購入したマイホームに物置部屋ができるのはもったいないと言えます。

さらに車を持っている場合、高齢になり免許を返納すると駐車場は不要なスペースです。

駐車場に限らず、整備できなくなった庭やベランダなどは雑草が生えたり、見栄えが悪いのでゴミを投げ込まれたりすることもあります。

外から見て手入れが出来てない家は、犯罪のターゲットになりやすく危険。

老後の生活を具体的に描いてから住宅を購入しないと、家を買ってもその良さを活かしきれずに終わってしまうのです。

家族から歓迎されにくい

老後に家を買いたい願望は、独立した子どもから歓迎されにくい傾向にあります。

家主がなくなった後、残された家族が家の処理をしなければならない。

家を相続して移り住んでくれるならよいのですが、子ども側も自分の生活がありますから、すぐに引っ越すのは難しいといえます。

つまり、購入者が亡くなってから当分の間は空き家となるのです。

相続人は1年に1回は固定資産税の支払いが必要。

住んでいないのにお金だけ支払う状況に、大抵の人は不満を覚えます。

また住人のいない家を保つには、定期的な空気の入れ替えや掃除をしなければなりません。

ポストにDMやチラシが貯まると誰もいないことが分かるので、空き巣に狙われないため都度回収に行くのも手間となります。

「相続するなら、管理が大変な家より現金が欲しい」というのが相続者の本音なのです。

老後に家を購入するために知っておくべきことは?

老後に家を買いたいなら、損をしないための情報は知っておきたいものです。

役立つ知識を4つご紹介します。

自分の健康状態を把握する

マイホームの購入前に、現在の自分の健康状態を把握しておきましょう。

体の調子が悪くなると、介護をしてくれる家族の元や専門施設へ移り住むことになり、家を買ってから数年も経たないうちに引っ越してしまうことになりかねない。

定期的な健康診断を受けたり、日頃の健康状態をセルフチェックすることが大切。

また「少し膝の調子が悪いかもしれない」などネガティブな情報も家選びの参考にします。

階段に手すりがある、段差が少ないなど、候補を絞って探すことができるからです。

万全の状態で老後を暮らしていけるよう、自力で生きていける状態なのかを客観的に把握することが重要となります。

高齢者でも住宅ローンを組めるケースを知る

老後に家を買う場合は、現金一括購入が安心です。

しかし中には、手元に資金を残して少しずつ支払っていきたい人もいるでしょう。

つまり住宅ローンを組みたいということです。

実は主要銀行では、次の条件をクリアすれば定年後でも住宅ローンの融資は可能。

ただし、働き盛りの世代よりも融資の限度額は下がると覚えておきましょう。

  1. 申込時に70歳未満である
  2. 完済時に80歳未満である
  3. 日本国籍である
  4. 団体信用保険に加入できる健康状態である

1〜3については、返済できる見込みを考えたものです。

4つ目の「団体信用生命保険」とは、契約者が亡くなるとローン残高を支払う必要がなくなる保険のことで、住宅ローンを組む際には加入が必須となります。

持病や入院経験がある方は団信を断られると住宅ローンが組めないので注意。

また、65歳で家を購入し、80歳でローンの完済を目指すとします。

20代であれば35年かけて返すローンを、わずか15年で返さなければなりません。

高齢で住宅ローンを組むと、短期的に金銭面の負担が大きくなるのです。

最初から頭金を多めに用意し、完済が見通せる状態で審査を申し込めば、老後に住宅ローン貧乏に陥る可能性が少なくなります。

住宅を購入したあとに起こるリスクを想定する

手持ちの資金が尽きたり、購入者自身が亡くなった後の事も考えておく必要があります。

家を売却すればいい、子どもに相続してあげればいい、と考えるのは安易。

2024年4月に総務省が発表した、総住宅数に占める空き家の割合は13.8%

約900万戸が空き家となっており、人口の多かった団塊世代が住居を手放すことによって今後も増加が予想されています。

つまり、家を簡単に売れる状況ではないのです。

所有し続けなければならないこともリスクとして知っておくべきといえます。

もし後の売却を前提として家を買いたいという場合は、需要がある物件を選びましょう。

例えば交通の便がよい地域や、子育て支援策の充実したエリアで住宅を購入すれば、売却時に比較的買い手が見つかりやすいです。

さらに日本は地震大国でもあるので、耐震設計を重視した家を選んでおくと、自宅への被害を抑えられる確率が上がります。

火災保険や地震保険には建物だけでなく家財も補償するオプションプランがあるので、家を買う前には保険内容も吟味しましょう。

購入を決める前に家族と相談する

例えば、以下のケースで家を買おうとすると、家族から反対を受けやすいです。

  • 退職金を住宅購入にあてる
  • 足が悪い、病気がちなど健康状態に不安がある
  • 家族や親戚のいない地方に家を買う

生活資金は足りるのか、万が一の時に家族が駆けつけられるのかと不安にさせてしまうと、家を買うこと自体に理解を得られない。

バリアフリー対応の家を買うと生活が便利になることや、資金繰りに不安がないといった根拠をよく説明して、誤解を与えないようにすることが大切。

一方、相続税対策として家の購入を考えている場合は、家族も納得しやすいでしょう。

家を買うことが相続税の節税につながる理論は次のとおり。

  1. 不動産の資産基準は固定資産税の評価額に基づいて設定されている
  2. 評価額は流動性があるため、住宅の価値は現金よりも低いとみなされる
  3. 小規模宅地等の特例に該当する住宅なら、相続税が8割減額されることもある

現金よりも物件として相続した方が、税金が抑えられます。

購入前に家族から理解を得るためには、理想を叶えるためだけでなく、残される家族への思いやりを言葉にして伝えるのがオススメです。

失敗しない!老後の上手な家購入ポイント

老後や定年後、上手に家を買うためのポイントを4つお伝えします。

難しいものはないので、気軽に試してみてください。

老後の理想について話し合う

老人夫婦でマイホームに移り住む場合、家に求める理想をすり合わせておきましょう。

お互いの活動範囲を見極めて、部屋数や広さの条件を決める。

生活動線が短くコンパクトに過ごすことの出来る間取りや、急な階段・大きな段差のない設計ならば、年齢層が高い方にとって負担の少ない家です。

ガーデニングや家庭菜園ができる庭があると、老後の趣味も兼ねられます。

ペットを飼えばその庭で遊ぶこともでき、生活が賑やかになるのです。

資金について考えることも大切ですが、老後を豊かに過ごせるような希望も入れて、優先順位をつけながら条件をまとめていきます。

ネットの声を活用する

近年はスマホが普及し、インターネットを扱う高齢者も増加しています。

家探しの際には、ぜひネットの口コミを活用してください。

例えば老後に暮らしやすい家を調べると、以下のような意見がありました。

  • 開閉するドアタイプよりもふすまのような引き戸タイプがよい
  • 頻尿に備えてトイレと寝室の距離は近いほうがいい
  • かかりつけ医院や銀行、通っている薬局に近い立地がオススメ
  • 公共交通機関を利用しやすい場所を選ぶ

他にも不動産屋の評判や、老後に持ち家を買った人の体験談を知ることができます。

失敗例を把握して回避し、成功例はマネしてみることで、賢い購入者になれるのです。

予算を決めてから不動産屋へ

老後何年生きるかと想定した場合の修繕費や税金、生活資金などをまず計算します。

そして、現在の資産からそれらを引いて残った分が家を買う予算です。

不動産屋や住宅展示場に行く際は、必ず予算を決めてから訪問しましょう。

一般的な住宅営業マンは「年配の方は資産を持っているはず」と思いがちです。

理想もお値段も高い住宅を勧められて、ハイグレードな家を一度見てしまうと、老後の素敵な生活を送ることに気持ちが向いてしまいます。

現実に見合わない住宅を契約しないよう、自身の経済バランスを見極めることが重要。

主な収入が年金の場合、手持ちの資産でまかなえる範囲の住宅にしないと、老後資金がどんどん切り崩されていくことになります。

流されそうで心配な方は、予算や条件を書き出したメモを持参するのがオススメ。

メモを見ながら会話することで、自分の家選びの軸を持つことができます。

専門用語に惑わされない

「資金が不安ならリバースモーゲージやリースバックという制度が使える」と説得してくる不動産屋もあります。

リバースモーゲージとは持ち家を担保に融資を受け、毎月利息のみを支払い、住む人が居なくなったら家を売却して残高を完済する制度。

売れる見込みのある都市部のマンションなど対象が決まっています。

リースバックは持ち家を銀行や不動産屋に売却し、物件を賃貸化して住み続ける形態。

月々の家賃を支払えば同じ場所に住めますが、家の権利を一切失うデメリットもあります。

どちらも老後に家を買う場合は旨味が少ない制度。

専門用語を頭に入れておけば、業者に言われるがままではなく自分で決断できる。

おいしい話をされても即決せず、メリットが本当にあるのか持ち帰って検討しましょう。

老後や定年後に家は買うな!のまとめ

老後や定年後に家を買うなと言われる理由、家を買うメリットとデメリット、老後上手に家を購入するために知っておくべき知識やポイントをご紹介しました。

定年後など歳を経てから家を購入するかどうかは、それぞれの財政状況やライフスタイル、余生の計画にあわせて考える必要があります。

老後にマイホームを購入することは、将来何年住めるかわからなかったり、資金面が目減りする不安を抱えるというデメリットが存在します。

しかし、暮らしやすい住宅で満足感の高い生活を送ったり、資産として家族に相続できるというメリットも大きいのです。

決して「老後や定年後に家を買わない方がよい」ということはありません。

周囲からのアドバイスを上手に取り入れ、リスクを回避した購入計画をたてましょう。

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アセット東北のマドンナ 鳩子が、皆さんに不動産にまつわるお役立ち情報や基礎知識、よくあるご相談を「分かりやすく」お届け!
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